2019年7月1日、「知ることでまちをどんどん好きになる!」プロジェクトの第一回目、国際理解交流会を開催しました。
参加者は、韓国、中国、インドネシア、タイ、インドから日本へ来た外国人5名、この発信事業のレポーター5名を含む、25名でした。
全体レポート
まずは、会の流れや開催の趣旨の説明から始まりました。
普段から、英語でコミュニケーションをとっている参加者もいたため、誰もが安心して会話に参加できるように、英語が堪能な運営スタッフが通訳にはいったり、スライドに対訳をつけたり、工夫をしました。
日本語を母語としない話者に寄り添うがあまり、かえって、英語に耳慣れていない日本人が不便さを感じるという気づきがありました。
続く自己紹介では、一人ひとりが、名前、話せる言語、住んだことのある場所、今までで一番遠くへ行った場所を話しました。
カナダ、ロシア、ペルー、アルゼンチンなど、たくさんの地名が挙がり、「外国語はできないけれどコンピューター言語ができる」「標準語と関西弁とのバイリンガル」という声もあり会場を沸かしました。
交流会への導入として、3名の外国人がインスピレーショントークを行いました。
韓国籍で中国やカナダで過ごしたあと、日本人の男性と結婚し、日本へ移り住んだSunyoungLim(ソニョン)さんは、空気を読むことを重要視する日本人の同調圧力について感じたことを話してくれました。
「自由奔放だと思われるけれど、率先して空気を壊しにいく」という反面「中学生になる娘に自分の好きなように振舞ってもいいと伝えるも、それが彼女のストレスになってしまうのでは」という等身大の悩みを明かしました。
日本に15年以上住んでいる中国人の陶さんは、自身のアイデンティティーやコミュニティとの繋がりの大切さを語りました。
インドネシアから来たSofiaKartika(ソフィア)さんは、日本の書類手続きの煩雑さや、言葉もかけず急に肩に触れられて怖い思いをした経験などを話しました。
参加者は、時々頷きながら熱心に耳を傾け、共感するエピソードには笑いが起こるなど、和やかな雰囲気に包まれました。
その後は、用意されたお茶とマフィンを手に取り、5~6名ずつに分かれてグループトークにはいります。各テーブルに外国人、進行役、レポーター、発言を付箋にまとめる“見える化係”など、偏りのないように座ります。
イエスかノーか判断の難しい「いいです」や「大丈夫」などの日本語の曖昧表現が、ときにもどかしく、ときに便利という話しや、仲良くなれば親切だけど知らない相手に無関心なのはなぜなのか、レジに立つ店員に“Say Hello”できる文化があればいいのに、など、外国人に限らず、わたしを含め日本人も日々感じている、思わず「えっ!」と言ってしまうような違和感や、「なるほど」と納得してしまう慣習、社会背景に至るまで、たくさんの意見が交わされました。
30分間グループ毎に行われた対話の内容を、全体に共有すると、共通点もあり、新たな視点もあり、たくさんの気づきが生まれました。
最後には、椅子を円形に移動し、参加した全員が思いおもいの感想を話して、国際理解交流会を締めくくりました。
- 「話し合いの場をつくってみることで新たな気づきがあった」
- 「まずは違いを知ることから相手との距離は縮まる」
- 「個性を尊重することが大事」
などの声が挙がり、お互いにバックボーンの異なる人たちが集まり、尊重の気持ちをもって対話することの意義をそれぞれに実感することができました。
センシティブな内容ながら腹を割って真剣に話し合ったあとには、参加者同士、打ち解けることができ、みなさんすっきりとした笑顔になっていました。
参加者の声
矢島加南子
Rさんは大変熱心なスピーカーで、その思いの「たけ」は声のボリューム、トーン、話した長さから他のメンバーにも「熱い思い」は伝わったのではないだろうか。しかし、肝心の中身はどうだったのだろう?疲弊した通訳(私)がロストさせてしまった情報(思い)のせいで彼女の意図した事の半分も伝わっていなかったのではないだろうか?そんな不安と、殴り書きのメモの山が私に残った。この山をどうしていくのか。丸のみ状態だと苦しいだけだ。かといって今更Rさんに聞き返す事はできない。通訳の難しさ、多言語コミュニケーションの大変さを痛感した。しかし、イベント後にRさんから聞いた感想は私の予想に反し「大変充実したひと時を過ごせた」という満足を表すものだった。情報を的確に伝える事と、話し手の満足度というのは必ずしも一致しないのだと気付いた。図らずも私が訳者として彼女の言葉に耳を傾け、ひたすら「聞き続けた事」が彼女の充足感に繋がったものと思われる。「聞いて貰えること」ということはこんなにも大きな力を持っているのだ。傾聴は癒しであり、言葉の壁すらも越える。
「言葉じゃないの!」「大事なのはHeart(心)」よ!Respect(相手を尊重する気持ち)よ!」と言っていたRさんだが、英語を分かる人が一人もいなくてもそう思えるのかは次回があれば聞いてみたい。
この言葉を聞くほんの十分前に、わたし自身が「赤ちゃんやペットを連れていると人に話しかけてもらいやすくて嬉しい」という趣旨の発言をしたからです。
これは、「話しもせずに外国人だからわからないと決めつけられる」ような、日本で暮らす外国人(それも、見た目から外国人だと思われやすい方)が向き合わされている日本人の反応が起こるのと、根っこは同じ原因なのではないかと考えさせられました。
危険から身を遠ざけることは命や生活を守るために必要な人間の本能です。しかし「相手が自分より強いか弱いか」「仲間か、そうではないか」そんな判断軸で愚直な反応をしてしまえば、それが的外れだった時、誰かを傷つけることになるかもしれません。そんな思考回路が巡りめぐって、自分たちの社会の息苦しさを作っているのではないか?という可能性にも、今回の対話を通して気づきました。
ハリネズミのジレンマ。わたしの中のささやかな保身が、意味もなく人を傷つけて自らの可能性を閉じてしまうだけの不合理なジャッジをしてしまわないためには、知らないことに自覚的であろうとし、自分の世界を閉じずに広げようとする意思が何よりも大切なのではないかと感じました。
大人になるとそれなりに世の中のことがわかったような気分になることもありますが、そんなものは大間違いなのだと。今回の楽しい対話の時間の中で、言葉を交わさせていただいた方々から教えてもらったことは、じわじわボディブローのように効いてきて、世界の見方をほんの少し変えてもらえたような気がします。
「日本人はSay Helloの心が足りないよね」これは海外育ちで日本に暮らす参加者の方から出た言葉です。これから続く日常の中でも、知らない世界にオープンな自分でありたいと思う、楽しく豊かな対話の時間でした。
斎藤百合恵
Pick Up !
Sharing Caring Culture(シェアリングケアリングカルチャー)
地域の中で外国人が活動する機会や場をつくられている『Sharing Caring Culture(シェアリングケアリングカルチャー)』。
今回、シェアリングケアリングカルチャーからは、二名の方にインスピレーショントークにご登壇いただきました。
半沢まり子
でも、文化の違いなどによる小さな「えっ?!」もやっぱりある、とのこと。
当日のインスピレーショントークで出た「同調圧力」という言葉も、私が参加した交流会テーブルで国籍問わず盛り上がり、あらゆる視点からの意見を興味深く感じました。
私はこのイベントに参加することで気づいた国際間の違いや共通の想いでしたが、シェアリングケアリングカルチャーでは日ごろから感じていることだろうと思います。
そこで、今回の企画にご協力いただいたきっかけや思いを代表の三坂さんに伺いました。
― 今回の企画にご協力いただいたきっかけや思いは何ですか?
三坂 慶子さん
外国人側からも、自分は、アウトサイダーだと思うという発言を聞いたことがあります。
お互いに言葉が通じない、コミュニケーションを取りにくいということも考えられますが、相手を知る機会が少ないことも見えない壁の要因かもしれません。
まずは、出会い、対話をする場を持ちたいと考えました。
― たしかに、地域で外国人を見かけることはあっても、接点となるとなかなか機会はないです。その機会がなくても暮らしていけますが、今回、相手を知ること・コミュニケーションを取ることで、普段疑問にも思わないような思い込みに気づくことができました。実際にイベント実施していかがでしたか?
三坂 慶子さん
私は、違いが日常的に感じられる国で外国人が暮らすよりも、日本のような同質化しやすい環境の下で外国人が暮らすことの方がはるかに大変ではないかと考えたことがあります。
今回、外国籍の参加者の言葉に耳を傾けながら、なかなか見えない、知り得ない外国人の想いを近い距離で知り、それをもっと多くの人たちと共有したいと思いました。
すぐに解決できるものではないでしょうし、分かり合えないこともあるでしょう。
それでも、話さないとわからないことが、多々あり、まずはその一歩を踏み出せたことに意義があったのではないかと感じました。
- VIDA Playgroup (未就学児の英語親子交流会)の開催
- 多文化カルチャー講座
- 英語版子育てレファレンスブックOYACOの編集、出版
を行ってます。
地球学校
横浜を拠点とする事業型認定NPO法人として、日本語が母語でない外国人向けの日本語教室や文化交流事業を運営されているNPO法人「地球学校」。
その理事長の丸山さんも、今回まちすき「国際交流理解の会」に企画段階から関わってくださりました。
菅原慧子
― 丸山さんは、 普段から地球学校のご活動を通じて多くの「違い」に触れられていると思います。そのご経験の上で、今回参加されていかがでしたか。
「じぶんごと」である生の声の力強さを感じた
丸山 伊津紀さん
今回のインスピレーショントークで海外から移り住んでこられた方々がご自身の体験談や困惑されたエピソードを話してくださいましたが、文化の違いや感じ方・人との距離感などの「違い」とその戸惑いをシェアしてくれた彼女たちの発言はご本人たちの「本音」「本心」であり、聞いている私たちに力強く伝わりました。
私が関わっている地球学校もそういう声に多く触れられる場所でありながら、表現できていないことをもったいないな、と気付くきっかけにもなりましたね。
わたしたちの中の『違い』も感じられた
丸山 伊津紀さん
先ほど述べたインスピレーショントークで、海外から日本へ来た方々の文化の違いや感じ方・人との距離感などの「違い」や戸惑いを聞いて、その後のグループワークで意見交換をしたときに、同じ場所で同じことを聞いても気になったことが人それぞれで異なる。
そこでまたその『違い』を目の当たりに”経験”できる、ということがとても貴重な場だなと感じました。
― 私自身も参加して感じたのですが、「違い」に触れられる、違いを知られる場所って、あまりないですよね。特に大人になって、所属も何もかもが違う人間たちが、という点もあります。
まずは、知ること。共感することよりも、共有することが大切
丸山 伊津紀さん
今回の会で、「共感するよりも、共有することが大切」と仰っていた方がいたのも、とても印象的でした。
私たちが運営する地球学校に関わってくださる方には様々な年齢/背景の方もいますが、私もよく「まずは相手を知りましょう」「まずは聞きましょう」と話します。
そうすると、実は「他人を知るためには自分を知ること」もとても大切だと気付きもします。
今回は「国際理解」として大きな文化圏の違いに焦点をあてていましたが、私が出身の関西と、関東でも違いはあります。
最初の自己紹介の時に、自分がバイリンガルだと言ったのはそういう意味を込めました(笑)
大なり小なり、私たちは違いの中で生活しているんです。
その違いがある相手にも、自分にも、「共感」を強いる必要はなく、違いに気付き、受け止めることが大切なのでは、と感じています。
そのための大前提が、まずは知ること。
今回のまちすきは、そのことを再認識できた場でした。
- 地球っ子教室
- 日本語教室
- 多文化交流活動