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概要
【日時】2021年7月7日(水)10〜12時
【講師】船本 由佳さん
大学卒業後、岡山県内のケーブルテレビ局に就職。その後、NHK広島放送局のキャスターとなり、大阪放送局、横浜放送局へと異動しながら、11年間、NHKのキャスターを勤める。出産を機に退職し、横浜の子育て情報紙などローカルメディアのライターとして、また、まちづくりの主体者として横浜で活動。2018年よりKosha33ライフデザインラボ所長。
【参加費】1,000円
【開催方法】オンライン開催(Zoom利用)
【参加人数】約15名(後日視聴を含む)
【協力】神奈川県住宅供給公社
【助成】パルシステム市民活動助成補助金・よこはまふれあい助成金
講座レポート
だれでも気軽にレポートを書いたり、情報発信したりできる時代になりました。しかし、信頼できる情報とは何か、よいレポートとは何か、どんな心構えで取材に臨めばよいのか、どれだけ意識できているでしょうか?
第4回の場づくりと発信講座は、『リポート記事を書くための基礎』をテーマに、ライフデザインラボ所長が、NHKでの取材やレポートの経験、そして複数のローカルメディアに関わってきた経験をもとに講座をひらきました。
伝えることの良さ
伝えることの良さって何だろう。こんな風に社会とのか関わりができたり、個人が豊かになったり、社会を変えることもできるんだよ、というお話から始まりました。
伝えるために、取材をしたり書いたりすることで、人間関係が広がったり、自分が知らないことを知れたり、自己肯定感があがったり、自分の伝えたことによって行動する人が出てたりするかもしれない、社会に何かしらの良い変化を起こせるかもしれない。そんなお話に、だんだんとワクワクしてきます。
何はともあれ大事な「基礎文章力」
リポートを書くときに大切になるのは、基礎文章力。それは、「何を書くか」とは関係なく、必要なものであり、常に研鑽しておくものだと語る船本さん。
リポートでもっともよく使われる『逆三角形』書式をとりあげ、「よい見出しとは」、「リードとは何か」、「集めた情報はどのように整理したらよいのか」など、実例を挙げながら、具体的なポイントを示してくれました。
また、文中に不要な敬語を使わない、受動的な文章はなるべく避ける、比較のための数字を入れる、声で読み上げる、独りよがりでないかを疑う、100をきいて10に絞る、こたつ記事にしない・・・など、気を付けるべき点も沢山教えてくれました。
取材とリポートの心構え
漠然と取材に行くのではなく、「どういった視点で切り取るのか?」を考え、見出し候補をいくつか先に決めてから、船本さんは取材に行くのだそうです。『わかりやすさ』と『偏向』は紙一重で、視点を決めることでわかりやすくなると同時に、偏りが生じる。そこは避けて通れないジレンマで、常に考え続けるところだと言います。
知らず知らずのうちに「決めつけ」が混ざっていないか、知らず知らずのうちに「傷つけ」をしていないか、それらを確認する手段も紹介されました。
許可が必要なことがないか、悪意はないか、捻じ曲げてないか、誰かを傷つけないか。複数の資料にあたったか、複数の人で確認したか。確認する!とにかく確認する!
ワーク:ペアインタビュー&レポート
後半は、2人1組のペアワークです。「5W1H」に基づいて相手の活動について10分間インタビューし、すぐさま情報をつたえやすく整理します。その後の発表で、『〇〇さんは、いついつから、~の活動をしています。きっかけは~です。私が興味を持ったのは・・・。」など、取材者の目線で整理した情報を伝えます。単なる自己紹介では知りえなかっただろう『その人ならではのストーリー』が、取材を通して浮き彫りになっていて、聴き応えのある発表でした。
それぞれのペアでは、話が盛り上がったり、実践したからこその気づきがあったようです。講座後のアフタートークでは、このメンバーでもっと取材をしたり、リポートの実践練習ができないか?もっとスキルアップしたいという、大変有難い声もいただきました。ぜひ今後につなげていきたいと思います!
参加してくださった方々の声
- 記事を書く際に、いつも軸がぶれてしまうことが悩みだったのですが、船本さんのポストイットを使っているという具体的な方法などを知ることができて良かったです。それぞれの自己紹介をするというのも、新しいスタイルの自己紹介方法で面白いと思いました。勇気をもらうこともできました。ありがとうございました。
- 自分のやっている事をお客様の視点で取材するという発想で、講座の内容を当てはめていくと、必要な情報が詰まった内容でした。店もこの夏に4周年を迎える今、ウィズコロナを見据えていよいよ発信をしていこうというタイミングでのこの講座はありがたかったです。
- ワークの時間が多かったので、聞くだけでなく実践できたのが良かったと思います。
- (10分インタビューのワークでは)5W1Hによってわかりやすく相手のことを知ることできました。
- 事前に頂いたシートへ記入することで、自分自身の整理にもなりました。また、10分インタビューで、たくさんの情報を精査しながら5分でまとめるのが、とても難しかったです。きっと慣れていくとコツをつかめたり、早くできるようになったりするのでしょうね。意識しながら経験を積むことが大事だなと思いました。
- リポートをする上での基本的な知識を得ることができました。何度もリポートをしてきましたが、色々考慮が漏れていたと実感しました。
おわりに
現代は、発信と受信の量がいずれも膨大になりました。だからこそ、発信も受信も気軽に無自覚にできてしまう環境でもあります。
しかし、そこには決めつけや、傷つけがあるかもしれないし、思った以上の影響があるかもしれないのだと、まず想像して、自分を疑いながら確認を重ねることが大切。これを聴いて、背筋が伸びる思いでした。情報を発信することの意義と責任を深く掘り下げながら、プロとして活躍してきた船本さんだからこその言葉の重みがありました。
インターネットでは、流し読みのできる、ひっかかりのない、手取り足取りの文章が好まれる面もあります。そんななか、船本さんからの『読み手に考えさせたり、もやもやさせたりしない文章は、よい文章ですか?』という問いかけはズシンと響きました。
「伝えるという行為はもっと奥が深く、人の思考力や想像力はもっと信頼に値するんだ」という信念と気概が、そこにはあるように感じました。たくさんの実践的なアドバイスも貴重なものでしたが、そうした発信者としての誇りある姿勢に大いに学べた機会でした。
ご参加くださったみなさま、本当にありがとうございました!